うたろぐ

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ごんぎつねの死亡フラグ

ごんぎつねが話題になっていました
小学生が書いた「ごんぎつね」の感想で議論勃発 ごんは撃たれて当たり前?

 覚えていない方のために簡単にあらすじをご紹介。いたずら好きなきつねのごんは、ある日兵十が病気の母親のために用意したウナギをわざと逃がしてしまいます。ところが、その後母を失って落ち込む兵十を見てごんは反省、償いのために魚や栗を兵十の家に届けはじめます。しかし、そうとは知らない兵十はごんがまたいたずらをしにきたのだと勘違いし、ごんを火縄銃で撃ってしまう。そこではじめてごんが食べ物を運んでくれていたことに気付くというお話です。

着火点となった2chのスレッドの>>1が以下。

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/05/08(水) 16:11:26.76 ID:0SLw7FB7O全文まるまるは無理だから要点かいつまむ

・やったことの報いは必ず受けるものだ
・こそこそした罪滅ぼしは身勝手で自己満足でしかない撃たれて当たり前

勿論身勝手やら自己満足なんてワード実際に使っちゃいないぞ
文章読んで端的に言うとそういいたいんだろうってことな
特に二つ目が物議を醸しているらしい・・・

「こそこそした罪滅ぼしは身勝手で自己満足」の裏には、人間と狐でコミュニケーションが可能であるという前提が必要です。

ごんと兵十はコミュニケーションが可能だったのでしょうか。

兵十がごんが運んでくる栗を不審がることを加助に話すと、加助がそれは神様のしわざだと結論付けるシーンがあります。

それを聞いたごんは

ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。

という思いを抱きます。これだけ見ると、ごんは人語を解しているように見えます。(人間→狐○)ただ、人語を話して人間とコミュニケーションが取れるかは不明です。(狐→人間?)

ごんぎつねの冒頭は

これは、私が小さいときに、村の茂平というおじいさんからきいたお話です。

と、茂平からの伝聞という形式を取ります。そもそもごんが人語を解していたという描写も茂平が盛っていたかもしれません。

昔語りをしていて、聞き手の子供に「なんでごんはそんなことをしたの?」という質問に答えて「そんときごんはこう思っていたのかもしんねえなあ」と付け加えるうちに、それが既成事実化していく感じ。

昔話と言えど人と獣が話をするには、なんらか理由が必要な場合が多いです。

生まれつきの特殊能力とか、便利アイテムとか、神様のきまぐれとか、そんなん。

なので、ごんと兵十はコミュニケーションはできなかったんだろうなと、長々書いた割りにはつまらない結論。

雪女や鶴女房などの異種婚姻譚は「決して見てはいけません」「決して話してはいけません」などの禁止を破って正体がバレると破綻フラグなところ、ごんは前述の通り

ごんは、へえ、こいつはつまらないなと思いました。おれが、栗や松たけを持っていってやるのに、そのおれにはお礼をいわないで、神さまにお礼をいうんじゃア、おれは、引き合わないなあ。

自分から正体をバラしたい欲求を持ってしまったのが死亡フラグだったのでしょう。

本編は以下より引用
青空文庫 ごん狐 新美南吉